アレンジャーという仕事について、「何をしているのか分からない」と言われることがあります。確かに、表に出てくるのは完成した楽譜だけで、そこに至るまでの過程は見えにくい。
今回は、私が実際にアレンジを作るとき、何をどういう順番でやっているかを、できるだけ包み隠さず書いてみようと思います。
① まず、とにかく曲を聴く
最初にやることは、依頼された曲をひたすら聴くことです。全体を通して聴いて、曲の雰囲気をつかむ。繰り返す部分はどこか、転換点はどこか、一番盛り上がるのはどのあたりか。何度か聴くうちに「気になる箇所」が出てきます。ここのコード進行が面白い、この対旋律が印象的——そういうことが少しずつ見えてきます。
② 耳コピで構造を把握する
コード進行を拾ったり、メロディの音を確認したりする作業です。ヴィオラとピアノへの編成変換をしたときは、元のオーケストラアレンジの音源を何度も聴きながら、どのパートが何の役割を担っているかを整理しました。「この弦のラインが曲の骨格だな」「このフルートは飾りとして省いても問題ないな」といったことを確認していく作業です。
③ 編成・パート割りを決める
おもちゃ向けのアレンジでは「シンプルにする」という方向が最初から決まっていました。どのパートを残してどれを省くか、という判断は、この目的から逆算して考えました。ヴィオラとピアノへの編成変換では、逆に「2つしかない楽器で、オーケストラの厚みをどこまで再現できるか」を考えました。「このラインはヴィオラに持たせる」「この伴奏型はピアノに展開する」という決定が、この段階でおおよそ固まります。
④ MuseScoreに入力する
私はMuseScoreを使っています。無料で使えること、操作が直感的なこと、この2点が決め手でした。いくつか別のソフトも試したことがあるのですが、結局シンプルに使えるMuseScoreに戻ってきた、という感じです。入力自体は地道な作業です。一音一音、または和音ごとに入力していきます。
⑤ 音を出しながら調整する——一番時間がかかる工程
この段階が、実は一番時間がかかります。「楽譜上は正しいはずなのに、聴いてみるとなんか変」ということが、意外なほど頻繁に起きます。おもちゃ向けアレンジでは「子どもっぽさが足りない」と感じて伴奏パターンを作り直したこともありました。ヴィオラとピアノのアレンジでは、ヴィオラのフレーズが高すぎて弾きにくいと気づき、オクターブ下げて音域を調整し直したこともあります。
アレンジの仕事の実態——地味な繰り返しの先に
こうして書いてみると、地味な作業の繰り返しだということがよく分かります。聴いて、直して、また聴いて、また直す。この繰り返しが仕事の実態です。それが恥ずかしいかというと、そうは思っていません。丁寧にやり直しを重ねることが、最終的に「使いやすい楽譜」につながると信じています。
楽譜制作やアレンジのご依頼は、Atelier Noteのサイトからどうぞ。
どんな用途・編成でも、まずはご相談いただければ一緒に考えます。