おもちゃの音楽を作るということ

アレンジャーの仕事、と聞いてどんな場面を思い浮かべますか。バンドのカバー曲、ピアノソロ用の編曲……そういったイメージが多いかもしれません。でも音楽の仕事というのは、思っているよりずっと幅広い場所に存在しています。

私はもともとおもちゃのOEMメーカーで働いていました。そのご縁で、おもちゃ向けの音楽制作に関わる機会をいただいていました。今日はその仕事の話を書いてみようと思います。

仕事の内容と、童謡の選定

子ども向けのおもちゃに収録する楽曲のアレンジ制作、そして効果音の制作です。

まず取り組んだのは、著作権の発生しない童謡のピックアップでした。「著作権フリーの童謡」といっても、実際に調べてみると思っていたより複雑です。作詞・作曲は著作権が切れていても、特定の編曲版には編曲者の権利が生じていたりする。おもちゃという形で商品に使う以上、そのあたりは慎重に確認しながら選んでいきました。

おもちゃ向けアレンジで意識した「引き算」

選んだ童謡をおもちゃ向けにアレンジするとき、いちばん意識したのは「シンプルさ」でした。ピアノや太鼓のおもちゃというのは、子どもが音を出して楽しむもの。アレンジが凝りすぎていると、おもちゃとして成立しません。和音の動きをどこまで削ぎ落とすか、リズムをどれだけ平易にするか。「引き算」の作業がずっと続く感じでした。

これは私にとって、少し新鮮な体験でした。いつもの編曲では「どう盛り上げるか」「どう色をつけるか」を考えます。でもこの仕事では、そういう方向とは逆に、とにかくそぎ落としていく。それでもちゃんと「この曲だ」と聴こえるように残すものを選ぶ。地味に聞こえますが、なかなか面白い作業でした。

効果音制作という、もうひとつの仕事

もうひとつ印象に残っているのが、効果音の制作です。「ピンポン」「ぶぶー」「きらりん」「ビョーン」といった、正解音・不正解音・演出音の類です。

こういう音は「誰もが知っている感じ」があります。「ピンポン」といえば、なんとなくあの音のイメージがありますよね。でも実際に作ろうとすると、何音で構成するか、どんな音色にするか、長さをどうするか、すべて一から決めなければなりません。

「きらりん」は少しファンタジックに、「ビョーン」は間延びしすぎず、「ぶぶー」は子ども向けだから怖すぎない感じに——などと考えながら作っていきました。1回でOKが出ることはほとんどなくて、方向性を確認しながら調整を重ねていく作業でした。正直なところ、こんなに試行錯誤するとは思っていませんでした。「ピンポン」一音に、これだけ時間をかけるんだなと。

この仕事を通じて感じたこと

この仕事を通じて感じたのは、「音楽の仕事」というのは思っているよりずっと広いということです。楽曲アレンジから童謡の選定、効果音まで、ひとつのプロジェクトの中でいろいろな種類の作業がありました。

どれが「本物のアレンジャーの仕事」で、どれが違う、ということもなくて。依頼者が必要としているものを形にするのが仕事で、その形はプロジェクトによってまったく違う。当たり前のことかもしれませんが、実際に経験してみてはじめて腑に落ちた気がします。

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kikka

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楽譜制作・アレンジャー / Atelier Note 主宰

国立音楽大学卒。楽譜制作・耳コピ・アレンジを専門とするフリーランスのアレンジャー。 「楽譜はアート」をモットーに、一人ひとりのための楽譜を丁寧に制作しています。

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